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【教養】あなたは、本当の「プラットフォーム」をまだ知らない

2019/9/21

「プラットフォーム」が当然のように使われだして、どれぐらいになるだろうかいわゆるGoogle、Apple、Facebook、Amazon(通称GAFA)を中心に、世界の時価総額トップをインターネットのプラットフォーム企業が当たり前に占めるようになり、今も続々と新たなスタートアップがプラットフォームになろうとしている。

だが、なぜこれらのプラットフォーム企業が世界に君臨しているのか。

そもそも、「プラットフォーム」とは一体何のことなのか。

実は、こうした疑問に明確に答えられる人は極めて限られている。

NewsPicks編集部は、テクノロジー経営の権威であるMIT(マサチューセッツ工科大学)スローンスクールのマイケル・クスマノ氏に直撃。

世界を席巻するプラットフォーム企業の秘密とその盲点、またUberやWeWorkなど新たなプラットフォーム企業が抱える弱点について、その核心を語ってもらった(全2回)。

世界初のプラットフォーム企業──あなたは今年5月、「The Business of Platform」を上梓されました。そのきっかけは何だったのですか。

私が、最初に「プラットフォーム」の研究を始めたのは、20年以上前のことでした。きっかけは1995年に「マイクロソフト・シークレット」という書籍を書いたときのことで、当時はプラットフォームという言葉はほぼ使われていませんでした。

マイクロソフトの社内でのみ使われていたのです。

そこで、私は、当時私の研究室で博士課程だったアナベル・ガワー(現・サリー大学教授)とともに、この「新しい現象」について、一般化する研究を進めたのです。

プラットフォームがもたらした「新しい現象」というのは、外部の企業のイノベーションに依拠することで、ある企業が成長していくことです。

2002年、彼女の論文を基に「プラットフォーム・リーダーシップ」という本を上梓しました。

当時は、インテル、シスコ、マイクロソフトを題材に、いかに「プラットフォーム」たちが、イノベーターとユーザーをつなげることで、新たなイノベーションを成し遂げていったのかを分析しました。

しかも、彼らは根底では、インテルのマイクロプロセッサとウィンドウズという共通のテクノロジーを駆使していました。

しかし、その後、プラットフォームという言葉は独り歩きし、全く異なるコンテキストで用いられるようになりました。

以前から、「プロダクト・プラットフォーム」というものはありました。

これは、ある企業がコアとなるテクノロジーを持っていて、彼らが、そのコアの周辺に複数のプロダクトを構築していくような仕組みです。

例えば、トヨタが前輪駆動車のプラットフォームを持っていて、それを軸に、カローラやセリカなど5つの異なる車種を生産するような仕組みですね。

補完的イノベーションがカギしかし、ソフトウェアの世界では、同じテクノロジーが、異なるエンジニアたちのグループで共有されるようになります。

すると、プラットフォームの考え方に大きな変化が起きます。

共通のテクノロジーなどが、外部の企業にオープンになるわけです。つまり、ウィンドウズの価値は、マイクロソフトがそこに構築するアプリケーションによってのみ生まれるのではなく、他の企業が作り出す数百万のアプリによって作り出されるわけです。

これは2002年の書籍で記したことです。つまり、我々が最初に考えた「プラットフォーム」の考え方というのは、サードパーティの企業群が生み出すネットワーク効果によって加速するイノベーションプラットフォームでした。

我々はこの仕組みを「補完的イノベーション」と呼びました。

ちなみに「ネットワーク効果」というのは、より多くのアプリケーションが生まれると、それだけ多くのユーザーが集まり、また逆にユーザーが増えれば、アプリケーションも増えるという仕組みです。

ネットワーク効果は、メトカーフの法則によって特徴づけられている濫用されだしたプラットフォームしかし、この辺りがごちゃごちゃになり、異なるコンテキストで用いられ始めました。

その後、アマゾンのマーケットプレイスやGoogleが、プラットフォームという言葉を次第に使い始めるようになります。

より多くの買い手がいれば、より多くの売り主が集まり、より多くのユーザーがいれば、より多くの広告主が集まる、といったふうに。

そして、インターネットやソフトウェア、デジタルテクノロジーを使った多くの企業群がプラットフォームと呼ばれるようになってきました。

ですが、Googleは広告を始めるまでは、プラットフォームではなかったわけです。

プラットフォームというのは、マーケットの両側をマッチするものですから。

そうするうちに、Facebookが登場し、山ほどのプラットフォーム企業が生まれました。

そして、この数年起きたことといえば、多くの書籍や記事において、プラットフォームの定義が曖昧なままに、異なる仕組みや産業を「プラットフォーム」と呼んでしまう事態でした。

覇者に共通する特徴とはアカデミアの世界では、プラットフォーム・ビジネスを、複数のマーケットの側面をマッチングするもので、ネットワーク効果によって加速するものだという認識が浸透しています。

それはその通りなのですが、プラットフォームにも種類があります。

テクノロジープラットフォーム、ソーシャルメディア・プラットフォーム、出版プラットフォーム、マーケットプラットフォーム、旅行プラットフォームーーなどですね。

そして、実は、これらを深く分析すると、2つに大別されます。

それはテクノロジープラットフォームと、トランザクションプラットフォームです。

前者は、サードパーティの補完をドライブするプラットフォームで、後者は、製品の販売やレンタル、情報の交換を可能にするプラットフォームです。

こちらは、すべてがトランザクション(取引)であり、異なる方法でお金を生み出します。

これらは異なるビジネスモデルなのです。

ちなみに、この両者を兼ね備えた存在が「ハイブリッド企業」です。

Google、アマゾン、Apple、マイクロソフトなど、今世界の時価総額でトップに名を連ねる企業というのは、両方の側面を兼ね備えた存在なのです。

このモデルの違いについては、誰もきちんと指摘していません。

誰もがプラットフォームについて話しているのに、そのパフォーマンスについてきちっと指標を用いて分析した人もいませんでした。

半分の従業員で、2倍の時価総額だからこそ、2015年にこの書籍にとりかかり始めたとき、私は20年以上前に戻り、それこそウェブの誕生期からデータを集め直しました。

さらには、プラットフォームのデータを通じて、同じ産業のプラットフォームではない企業(non-platform)と比較を試みました。

実際のところ、プラットフォーム企業は、非常に効率的です。

プラットフォーム企業は、同じ産業のnon-platform企業と比べ、同じ売上高を、約半分の従業員数で達成しています。

営業利益も、時価総額も2倍以上を記録しています。

さらに、興味深いのが、誰もが成功するプラットフォームを目指しますが、ほとんどが失敗してしまうということです。

トップの43社と同じことに取り組んだ209社が失敗に終わったことを確認しました。

もう一つ注目したのは「勝者総取り効果(Winner-take-all effect)」、もしくは「勝者ほぼ総取り効果(Winner take most effect)」です。

これは市場を支配するような企業を生み出す一番のドライバーです。

ネットワーク効果によって独占しやすい市場では、その企業はどんどん支配力を高めていきます。

ネットワーク効果というのは、自己増強のループですから。

GAFAへの逆風の理由しかし、これは諸刃の剣です。

もし、ある企業の支配力が強まりすぎると、彼らプラットフォーム企業たちは、ユーザーたちの悪用、政府による規制、そして独占禁止のターゲットになります。

そして、この1年で、(GAFAなど)巨大プラットフォーム企業を取り巻くムードは一気に変わりました。

今世界で問題になっているのは、こうした企業をいかに規制するかであり、企業側としても、際限ない成長戦略をただ描くだけでなく、自身のプラットフォームで起こっていることを規制していかなければならなくなったということです。

ですが、そもそも彼らが成長してきたカギは、オープンなイノベーションな環境に、多くの人々を巻き込む手法でした。

すると逆に、そこで起きていることを全て管理するのは、かなり難しいわけですね?Facebookには20億人ものユーザーがいます。

彼らはトランザクションプラットフォームですが、2007年からイノベーションプラットフォームとしての側面も持つようになりました。

つまり、サードパーティが、Facebook上で、アプリケーションを構築できるようになったのです。

そこには少なくとも1000万のアプリケーションや、Facebookを通じてアクセスできるウェブサイトが乗っかっています。

そして、それらすべてをFacebookがコントロールするのはもはや不可能なのです。

それこそが、彼らがケンブリッジ・アナリティカの問題、ロシアによるFacebook上のフェイクニュース問題などに巻き込まれた根本的な理由です。

今や、時代は移り変わり、こうした巨大プラットフォームをいかにきちんとマネージしていくかの青写真が求められるようになりました。

私の元にも今、政府や企業から、どうすればいいのか相談の電話が毎週かかってきます欧州委員会は、この問題についてとても活発な動きをしています。

アメリカよりもかなり研究も進んでいます。今ようやく、アメリカもなんとか追いつこうとしています。

今はそうしたシフトのまさに真ん中です。この問題にどう答えを出していくかは、まだしばらく時間がかかると思います。

──あなたが長年追っているマイクロソフトは、一度この道を通ったのではありませんか?

はい。

だから、書籍の中で、プラットフォームの「諸刃の剣」を描いた章では、マイクロソフトの話から始めています。

マイクロソフトという会社は、支配的なプラットフォームになりながらも、その地位を濫用しない方法を学んだわけですね。

政府は一時、マイクロソフトを解体させようとし、その勝利を喧伝しました。

結果、彼らは解体されずにすみましたが、しかし10年にもわたり、政府の監視下に置かれた状態で企業運営をしなければならなくなりました。

私が気づいたのは、ほかのプラットフォームたちが、マイクロソフトの経験から何も学んでいないということです。

彼らは、1990年代にマイクロソフトがしでかしたのと全く同じ過ちを繰り返しています。特に顕著なのはGoogle、アップルです(両者ともに欧州委員会から訴訟を起こされている)。

Facebookもそうですね。なぜ、彼らが学んでいないのかは分かりません。

一番の問題は、一度ネットワーク効果を通じてこのレベルの支配力を身につければ、別に独占禁止に抵触する必要などないということです。

ユーザーたちは、そのネットワークがある限り彼らのシステムを使い続けるわけですから。

Googleは、スマホのOSにおいて、世界シェアの8割を握っていて、ユーザーは何もいわなくても検索に、グーグルマップ、クロームを使うわけですね。

だとすれば、Googleは、人々に自分のサービスを使わせるために、アルゴリズムなどを操作する必要なんてないはずなのです。

これは1990年のマイクロソフトと同じです。

マイクロソフトのケースで学んだことは、それほどまでの支配力を持ってしまった場合は、そのリソースは自らのビジネスを自社ネットワークで促進することに使うべきであり、違法な振る舞いに手をだすべきではない、ということです。

ソフトバンクが犯した失敗ただし、ここまでは、支配的なプラットフォームの話です。

しかし、今から新たにプラットフォームになるのはどうでしょうか?

 こうしたプラットフォームの考え方を生かした、新たな起業ニーズはたくさんたくさんあります。

確かに、マーケットはいくつかの巨大プラットフォームに支配されていますが、サービスを始め数多の市場において、企業が成長できるチャンスがあります。

我々は、トランザクションプラットフォームを立ち上げたユニコーン企業250社の分析を試みたところ、そのうち60〜70%が実際にビジネスを成立させていました。

つまり、将来にわたって、新たなプラットフォームが生まれてくるということです。

しかし、彼らはきちんと経営されなければ、お金を生み出すことができません。

逆に言えば、そもそもが「ダメなビジネス」をプラットフォーム化しても、良いビジネスにはなりえないということです。

Uberを見れば、それは一目瞭然ですね。

ライドシェアも、タクシーも、そもそもビジネスとして旨味がある領域ではありません。

利益率の低いビジネスなのです。

投資家も、特にソフトバンクは失敗を犯したと思っています。

ソフトバンクは、Uberがスマートフォン上で動いていることもあって、いずれはデジタルビジネスと同じような倍々の成長と利益率で伸びていくと考えていたのだと思いますが、こうしたトランザクションプラットフォームのほとんどは、デジタルビジネスにつながるのではなく、物理的なビジネスにすぎません。

つまり、Uberというのは良いプラットフォームではないのです。

彼らは、乗客、そして運転手に徹底的に補助金を与えることで、人工的に需要と供給を作り出しています。

それが彼らのメカニズムです。

一方で、Airbnbというのは素晴らしいプラットフォームだと思います。

こうしたビジネスは異なる産業であっても、同じ問題に直面しています。

投資家にとっての「ねずみ講」この状況は、あえて言えば、投資家にとっては、詐欺的な要素をはらんだ「自転車操業」もしくは「ねずみ講」とさえ言えるかもしれません。

Uberは間違いなくそのうちの一つだと言えます。

Uberを通じてお金を稼いでいるのは、初期の投資家だけです。

そして、彼らの多くはすでに売り抜けています。

──今話題のWeWorkはどうでしょうか?

WeWorkも格好の事例ですよね。

悪いビジネスを、デジタル化もしくはプラットフォーム化したときに起きることは、数百万ドル(数億円)単位の損失ではなく、数十億ドル(数千億円)単位の損失を生み出してしまうということです。

そういう意味では、WeWorkはまさに一番の事例なのです。

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