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大谷翔平の2年目、アメリカはどう見たか

突然の発表となった左膝の手術で大リーグ2年目のシーズンを終えた大谷翔平。投手としてのリハビリを行いながら、指名打者としてエンゼルスの中核を任された1年だった。プロ生活で自身初となる打撃に専念したシーズンを、アメリカの専門家やファンはどう評価しているのか。米新聞社でスポーツライターの経験もある日本人ジャーナリストが探った。

◇長打低下は憂慮すべき?
 ベーブ・ルース以来となる投打の二刀流で米国デビューを果たし、昨年は米野球界に衝撃を与えた大谷。今年はそこまでの活躍とはならなかった。数字を比べると、長打の低下が明らかだ。

2018年
打席数367、打率.285、22本塁打、59得点、打点61、出塁率.361、長打率.564、10盗塁

2019年
打席数425、打率.286、18本塁打、51得点、打点62、出塁率.343、長打率.505、12盗塁

 選手の攻撃面での総合的貢献度を測るwRC+という指標では122を記録。これは同じだけ打席に立った平均打者より22%多くの得点を生み出していることを示す。立派な数字だが、メジャー10指に入った昨年の151には及ばない。

 「打撃に専念するので、もう少し良い成績を残すと予想していた」と話すのは地元紙オレンジ・カウンティ・レジスターでエンゼルスの番記者を務めるジェフ・フレッチャー。「特にホームラン数が、打席数は増えたのに昨年よりも減っている」

 打球速度を見ると、昨季と変わらず強い打球を打ててはいる。しかし、打球が上がらずゴロになる割合が49.6%と、昨年の43.6%よりも増している。ゴロはヒットでも長打になりづらい。

 ボールをとらえる位置がキャッチャー寄りで、バット軌道が上向き時にボールをとらえられていなかったと現地の専門家は分析する。もう少し手前でボールをとらえて引っ張ることができれば打球も上がるという。

 それでもフレッチャー記者を含め、心配の声はあまり聞こえてこない。

 「メジャーリーグでプレーする大変さはメディアの人間も分かっている」とフレッチャー。「野球ではちょっとした変化が良い年とそうでない年の分かれ目になる。だから選手たちは微調整をし続ける。大谷の成績低下は大事のように聞こえるかもしれないけど、あと6本くらいホームランを多く打っていたら全く別の評価になっていることから考えても、そんな大した話ではないよ」

 米野球専門雑誌ベースボール・アメリカのカイル・グレーザー記者もこう話す。

 「今シーズンはどれくらい期待すべきなのか分からなかった。右肘の手術があったからね。確かに昨年ほどは打っていないけれど、それでもメジャーの平均的打者をはるかに上回っている。成績の下降がケガの影響なのかは分からないけど、個人的には心配することはないと思っている。才能は間違いないし、ずば抜けた身体能力を持つ。すごく怖い打者だよ」

球場に観戦に来ていたエンゼルスファンにも話を聞いたが、ほとんどが大谷の活躍に満足しているようだ。

 「投手としてリハビリもしている打者としては、十分期待に応えてくれました」と家族で応援に来ていたニール・タイナーさん(37)は言う。「去年の彼は良すぎましたし、手術で出遅れたこともあって、今年はそれほど望んではいませんでした」

 大谷はすでにエンゼルスファンの間で、球界の顔ともいえるマイク・トラウトに次ぐ人気選手としての座を確立している。球場のファンが着ているユニホームや背番号Tシャツをざっと見ても、トラウト6割、大谷2割で、残りが他選手といったところだろう。

 しかし、わずか1年間で2度の手術を受けたこともあって、大谷の健康状態を心配する声は聞こえてくる。

 「問題は大谷の体の強さよりも、トレーニングや実戦の負担量」とグレーザー記者は言う。「メジャーで打ったり投げたりするのは大変な作業。それを両方やるというのだから、体が持つのかどうか心配」

 シーズン終了を待たずに左膝の分裂膝蓋(しつがい)骨に対する手術を行ったのは、強度が増してきた投球のリハビリで、膝をかばおうとして腕などを痛めるリスクを避けるためだ。

 「きょうの試合で大谷を見られないのは残念ですが、彼が来季に健康な状態で戻ってくる姿を見られる方がうれしい」とタイナーさん。「チームもプレーオフに出られないし、早いうちに手術をしてしまった方がいい」

 順調に回復すれば、投球のリハビリを年内に終えて、来季は二刀流を再開する。昨年と同じく1週間に1度の先発登板の合間に、週4日ほど指名打者で出場するというのがフレッチャー記者の見方だ。

 1年以上、試合で投げていないため、来季の成績予想は難しいとグレーザー記者は話す。それでも怪我がなければ、いつかはエースとして投げながら打線の中軸を打つ選手になるだろうと言う。

 「彼は投打の両方でオールスターに出られる選手だよ」

チームはというと、打者大谷の頑張りもむなしく5年連続でプレーオフ進出を逃した。シーズン前にはワイルドカードを狙えるのではないかと見られていたが、度重なる選手の故障にも悩まされ最後まで勢いに乗れなかった。

 打撃の要の1人として期待されたジャスティン・アップトン外野手は、オープン戦でつま先を痛め、2か月半遅れてのスタート。前半戦にオールスターに選ばれるほどの活躍を見せたトミー・ラステラ内野手は自打球で右の脛を骨折して離脱した。

 不安視されていた投手陣は、FAで獲得した先発のマット・ハービーとトレバー・ケイヒル、抑えのコーディー・アレンが全く振るわず。故障も相次ぐ中、7月には先発左腕タイラー・スキャッグスが急逝するという不幸に見舞われた。チームに精神的ダメージを与えたことは間違いない。

 9月17日時点で、チーム防御率5.10は30球団中24位だ。

 「今年の成績にはガッカリしています」とエンゼルスファンのアンディ・アレアノさん(53)は話す。「(昨年まで監督を務めた)ソーシアは笑っているでしょうね。ピッチャーをもっと充実させないと。7、8点取っても負けるんですから」

 ヤンキースやレッドソックスといった古豪ならファンから罵声を浴びせられてもおかしくない。だが、大らかなエンゼルスファンは、怒りというより「またか」という嘆きや自嘲の声をあげる。

 「浮き沈みには慣れています」とタイナーさん。「チームが苦しい時に温かく応援するのがファンですよ」

 有望若手選手が台頭してくる来年からが勝負だと言われるエンゼルス。特に弱点と言われる投手陣にとって、大谷の復帰はカンフル剤になるだろう。

 大谷が1年を通して二刀流を続けてチームの躍進に貢献できれば、再び米野球界を熱狂させることは間違いない。

 「大谷はとてつもない選手」とグレーザー記者。「彼が活躍するとメジャーリーグが盛り上がる。とにかく健康でいてくれることを願っているよ」

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