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【真相】日本から「プラットフォーム企業」が生まれない理由

2019/9/22なぜ、GAFAなど巨大プラットフォームが世界に君臨する一方で、多くのプラットフォーム企業は失敗に終わるのか。テクノロジー経営の権威であるMITのマイケル・クスマノ氏に聞いた。Uberで金を稼いだ人たち──Uberというプラットフォームの登場によって恩恵を受けた人もたくさんいます。私は、彼らのサービスが悪いと言ってるわけではありません。Uberは素晴らしいサービスです。Uberの登場で移動という手段は、タクシー時代より便利になったのは間違いありませんから。ただ、問題は彼らが自転車操業で、ドライバーを維持せねばならず、そのために補助金を払い続けねばならないということです。そうでないと、彼らは辞めます。彼らの離職率は、毎月13%です。つまり、数字上は、Uberのドライバーは7〜8カ月で100%入れ替わっているということになりますね。一方で、今Uberには400万人という膨大な数のドライバーがいます。そのうち1人を雇うためのコストは650ドルです。我々の推計では、Uberは毎月ドライバーを雇うだけのために3億ドル(300億円)を支払っています。年間で言うと30〜40億ドル(3000〜4000億円)です。

運転手に補助金を突っ込まないと成立しないUber(写真:Smith Collection/Gado/Getty Images)つまり、彼らは、需要に供給をマッチさせているというより、ただ巨額の資金を失っているだけです。人工的に、供給を生み出しているだけなのです。需要側も、彼らは市場より低い価格を維持せねばなりません。これは費用に対して、十分なキャッシュを生み出せないということです。つまり、Uberは大きくなるに従って、それだけのお金を失っていくわけです。そして、彼らは、(出資者である)ソフトバンクの致命的な過ちによって資金が補給され、今は上場を果たしました。しかしお金を稼いだのは、初期ラウンドの投資家だけであって、彼らはもういません。補助金で回すビジネスの限界WeWorkも同じです。彼らもサービスとしては素晴らしい。だけど、彼らがやっているのも、素晴らしい賃貸物件を、市場価格を下回る短期間のリースで提供しているといえます。そして投資家たちが補助金を供給している形です。UberやWeWorkの投資家は、究極的には、彼らが市場を支配するだろうと考えているのでしょう。前回申し上げた「勝者総取り」のダイナミズムがありますから。しかし、実際は、Uberはすでにシェアの7割を勝ち取っています。それなのに、今年も30〜40億ドルを失っている。すると、一体彼らは何を勝ち取ったのでしょうか?ダメな市場を支配しただけなのです。彼らが稼ぐためにできることは、料金を上げることだけです。すでに徐々に値上げに手をつけていますが、そこには競合のLyftがいます。

(写真:jetcityimage/iStock)ニューヨークでは、公共交通もあり、タクシーもあります。タクシー会社も今復活し始めていますね。すると、あらゆる市場で彼らが利益を生み出すことはさらに難しくなっているわけです。UberのIPOのデータを眺めると、彼らはほとんどの市場でお金を失い続ける一方で、いくつかの都市においてのみ利益を生み出していました。それはタクシーと公共交通に不足が生じている都市です。つまり、ロンドンやニューヨークです。それ以外では稼ぐことができていません。これが意味するのは、Uberが取るべき戦略は、サイズを小さくして、稼げる市場に集中すべきということです。ちなみに彼らはUber Eatsなどニッチなビジネスも展開しています。しかし、料理のデリバリーも悪いビジネスの一つです。客とレストランの両方から手数料を取れるという点で、人を運ぶのよりは少し利益率は高いですが、基本的には利益を生み出せません。我々は欧州でフードデリバリーを手がけるDeliverooについても調べましたが、彼らも同様に損失を生み出していました。アマゾンも一度、料理のデリバリーに挑戦しました。しかし、彼らはこれでは稼げないとすぐに見切りました。プラットフォーム狂になるなこれも本質的に「ダメなビジネス」なのです。これは、アマゾンに多額の利益をもたらすマーケットプレイスや、ウェブサービス(AWS)のような良いビジネスとは根本的に異なるものです。一方Uberには、利益のドライバーがありません。いくつかの都市で稼いでいるだけです。WeWorkも同様です。しかし、なぜか世の中には「プラットフォーム狂」が存在するわけです。ここしばらくの間、投資家たちは皆プラットフォームビジネスに熱狂していました。まるで1990年代のドットコムバブルのように、お金をつぎ込んだわけです。「あなたはプラットフォームですね。だったら投資します」といった具合に。しかし、プラットフォームにもダメなビジネスはたくさんあります。特に、ビジネスが物理的な側面を持つようになると、お金を生み出すのは難しくなります。ネットワーク効果を考えるなれば、オンラインビジネスであるべきなのです。

──物理的な側面が加わると、ビジネスが難しくなる。物理的なサービスのビジネスは基本的に価格が高くなります。インターネットとスマートフォンは、オーダーする方法を変えることによって、様々な取引を効率化してきました。とはいえ、サービスを届ける部分では、価格を低減する方法は全く見つかっていません。だからUberは、自動運転のような興味深い実験をしていますね。もし自動運転車が誕生すれば、ドライバーを抱えなくてすみます。彼らにとって、一番の費用はドライバーなわけですから。しかし、それが何かを好転させるわけではありません。プラットフォームは、2つの市場をマッチすることです。Uberだと、車を所有しているドライバーを、移動したい人とマッチさせます。だからUberは、車の所有費やタクシーのライセンス代は払わなくてすんでいます。だけど、自動運転を実現しても、現在ドライバーが400万人なので、例えば100万台の車を保有しなければならなくなる。車が5万ドルだとすれば、100万台だと、500億ドル(5兆円)になってしまうわけです。毎年、この額が必要なわけではありませんが、巨額なことにはかわりはありません。Airbnbが素晴らしい理由これはWeWorkがすべての不動産を買っているのと同じです。経済学の観点でいえば、これはナンセンスです。一方で、Airbnbが優れているのは、彼らは何も所有せずに、(借り主と貸し主の)両側から稼いでいるということです。補助金をつぎ込むこともありません。しかも、市場よりも価格を低く設定する必要もありません。貸し手が価格を決めることができますから。彼らは誰にもお金を支払うことなく、貸し手と借り手からお金を手に入れる。これこそが、完璧なプラットフォームビジネスといえるでしょう。UberやWeWorkで問題なのは、プラットフォーム側が早く成長しようとして、需要と供給を作り出すためにお金を注ぎ込みだすことなのです。これは、ネットワーク効果の考え方を無視したものです。今、多くの人々がこうしたシンプルな概念を理解していないのではないでしょうか。普通に考えれば、Uberがダメなビジネスだとすぐに分かるはずです。Lyftだって同様でしょう。彼らはサイズが小さいので、損失も少なくすんでいるだけの話です。

Airbnbは優れたビジネスだ(写真:Phillip Faraone/Getty Images for WIRED25)──アマゾンはなぜここまでプラットフォーム化に優れているのでしょうか。1つ注意しておきたいのは、オンラインでビジネスを展開することが、すなわちプラットフォームになる、ということではありません。プラットフォームというのは、2つ、もしくは複数の市場をつなげるものです。そうすることでネットワーク効果が生まれるわけですから。マーケットプレイスはその仕組みがありますが、オンラインストアにはそれがありません。アマゾンは1995年に登場した当時、オンラインストアにすぎませんでした。彼らは本を買い取り、それを再販売するモデルでした。しかし1999年、彼らはマーケットプレイスを開始します。第三者が、アマゾンで商品を販売できるようにしたのです。ただ、わずか2年前まではマーケットプレイスは、彼らにとって小さな事業の一つにすぎませんでした。プラットフォーム王アマゾンですが、この2、3年で、マーケットプレイスは爆発的に伸びました。今や売り上げの60%近くがサードパーティになり、利益の源泉となっています。長年、トントンだった利益が、この2、3年で転換しました。その間、アマゾンはフルフィルメントサービスや広告で稼いでいました。フルフィルメントでは決済や配達で、巨額の利益を生み出し、広告は、サードパーティに広告費をもらうことで、検索と連動させていく仕組みで稼いでいました。そして、彼らは、広告だけで400億ドル(4兆円)を何もせずに稼ぎました。これは、プラットフォームだからこそできることです。──AWSも強いですね。AWSは、アマゾンの利益の6割を占めています。だけど、売上高では、12〜15%にすぎません。つまり、とてつもなく利益率が高いということです。これはデジタルビジネスかつプラットフォームでもあるからこそ、なせる業ですね。開発者は、AWS上でアプリケーションのフレームワークなど購入することができ、それらを使って、新たなアプリケーションを開発していく。つまり、ネットワーク効果がある、ということです。これらがアマゾンにあって、UberやLyft、そしてWeWorkにないものです。WeWorkは不動産のオペレーションに過ぎないということです。

(写真:Beboy_ltd/iStock)──すると、今後も巨大プラットフォームだけが覇者であり続けるのでしょうか。彼らは今も新しいビジネスであり、消えてしまうことはありません。むしろ今、興味深いのは、旧来の企業たちが完全に駆逐されてしまうのか、ということです。Airbnbがホテルに完全に取って代わるのか、Uberがタクシーを葬ってしまうのか。私はそうは思いません。彼らは共存することになります。今や、古い企業たちも新たな仕掛けを考え始めました。例えば、ホテルのマリオットがホームシェアリングを始めましたね。これは大きな一歩ですよね。また旧来のタクシー会社も、アプリに手を出し始めました。Uberは利益こそ出せていないものの、便利なことは間違いありません。だけど、タクシーに完全に取って代わることはありません。無理にしようとすれば、資金が枯渇して、倒産します。ソフトバンクのような存在が資金を投入し続けないかぎり。だから、プラットフォームは、non-platformの企業と共存していきます。老犬が新たな技を覚えるか逆に注目なのは、伝統的な大企業はプラットフォームのようになれるのか、ということです。老犬は新たな技を覚えられるのか。これを考える中で、一番興味深いのはウォルマートです。彼らは世界の巨大企業の一つであり、物理的な店舗展開は強力な武器です。同時に、素晴らしいオンラインのプラットフォームを作り上げています。ほとんどがオンラインストアではありますが、マーケットプレイスもうまくいき始めています。今やあらゆる小売店がオンライン展開を始める時代ですが、ウォルマートは、マーケットプレイスにもきちんと取り組んでいます。自社の商品だけでは、ユーザーのニーズの全てには応えられない中で、サードパーティの商品も取り扱っているわけですね。アマゾンのレベルまでいけば、売り手と買い手をマッチするだけでよくて、所有リスクを取らなくてすむわけですが、ウォルマートも、そこに乗り出し、少しずつ結果を出し始めています。このように旧来の企業がプラットフォームに乗り出す動きが目立ち始めました。ホテルがAirbnbのようになり、タクシー会社がスマホアプリや、オンデマンド迎車、料理や荷物のデリバリーまで手がけるようになり始めた。今後はより旧来の企業たちがプラットフォーム的な活動に乗り出し、プラットフォーム企業たちにとっての競争環境が激しくなっています。彼らにとっては、ユーザーベースが断片化し、ネットワーク効果が薄くなってくるわけですから。

(写真:Beboy_ltd/iStock)ゲイツとベゾスの共通点──日本ではなぜテクノロジープラットフォームが登場していないのでしょうか。なぜ、日本がここまで遅れたのか。これは大きな問いです。まず、プラットフォームの考え方は、やはりマイクロソフトから始まっています。そして、パソコンに始まり、インターネットへとつながりました。プラットフォームを生み出した起業家たちは、ビル・ゲイツからマーク・ザッカーバーグまで基本的に、プログラミングのスキルを持っていました。独学で学んだ起業家も多ければ、高校で学んだ人もいます。ベゾスもゲイツも、コンピュータープログラミングを中学時代に習得しています。私はゲイツより1歳上ですが、大学に行くまでコンピューターに触れたことがありませんでした。しかも、それはIBMのメインフレームでした。スクリーンはなかった。

ゲイツとベゾスの共通点(写真:Jeff Vinnick/Allsport/Getty Images)だけど、ゲイツは13〜14歳の時点で、PDPコンピューターを触っていたわけです。ベゾスは私より10歳年下ですが、彼もゲイツと同じぐらいの年齢でプログラミングを習得していました。PCとインターネットの世代の起業家というのは、誰もが若い世代でプログラミングを学び、いかにデジタルテクノロジーを使いこなすかをわかっていた。ただ、日本には、そうした世代が生まれなかった。日本でもゲームには、そうした世代が生まれましたが、起業家は少なかった。高校や大学で、起業家を目指していくような伝統は生まれませんでした。皆が大企業を目指した。それがある意味で、「失われた20年間」を生み出したわけですね。日本がここまで遅れた理由もう1つ。ここに1つの図があります。

日本はこの上側のピラミッド構造で強みを発揮してきました。この旧来のビジネス構造では、外部企業との関係は、供給契約やフランチャイズ、ライセンスなどをベースにしていました。しかし、プラットフォームのエコシステムでは、サードパーティのプレイヤーは、自律的であり、ネットワーク効果をもたらす存在でした。もちろん契約書にはサインをしなければいけませんが、サプライヤーとしての立ち位置ではありません。iPhone上で、アプリを開発する何百万社はアップストアに入るために、もちろん合意が必要ですが、アップルにとってのサプライヤーではありません。実は、当初はアップルもここで間違いを犯していました。マッキントッシュの発売時もそうですし、iPhoneを発売したときもそうですが、スティーブ・ジョブズは、ピラミッド構造を持ち込もうとしていたのです。ジョブズは、当初はアプリを作らせるための企業を自ら雇おうとしたのです。マッキントッシュのときは、彼はビル・ゲイツとマイクロソフトを雇った。iPhoneのときも、最初のアプリは電話機にバンドルされており、APIはなかったわけです。その後、iPhoneのプラットフォームをある程度オープン化したことで初めて、このエコシステムはとてつもなく大きくなったのです。これはプラットフォームだからできることです。

サプライチェーンとプラットフォームは根本的に異なる(Photo by Junko Kimura/Getty Images)旧来のピラミッド構造では、何百万の会社をコントロールできるわけがないのです。せいぜい可能なのは数百社にすぎません。自動車や家電のサプライチェーンがそうであるように。だけど、プラットフォームでは百万単位なのです。日本人は、それを理解していない、もしくは不満だったのかもしれません。なぜなら、ネットワークの中で起きていることをコントロールできないわけですから。逆にいえば、ウィンドウズはいつも散らかり放題だった。アプリケーションはいろんな問題を起こすわけですが、ビル・ゲイツは全く気にしなかった。それらはウィンドウズに価値を与えてくれているわけで、そのイノベーションを求めていたわけですから。一方、先述のようにスティーブ・ジョブズは、(サードパーティへのコントロールが利かないことに)最初は不満を持っていました。彼は物事をコントロールしたがっていたわけですが、アップルが3回目の倒産危機に陥ったときに、彼の周りの経営陣が徹底して説得したことによって、iPodのオープン化を果たしたわけですね。だけど、日本はいまだにその構造が好きではないのかもしれません。それと先述のような、デジタルスキルや起業経験がネックとなっているのでしょう。日本の大学教育は責められてしかるべきだと思っています。

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