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【1週間要約】Airbnb「上場」の新潮流、アマゾンのEV大量調達

2019/9/22今週1週間、アメリカのシリコンバレーでは何が起きたのか?忙しい読者が簡単に1週間をおさらいできるよう、現地のトピックを5つに絞ってダイジェストでお届けする。今週はAirbnb(エアビーアンドビー)の2020年のIPO実施が明らかに。注目はその「上場方法」だ。その他、エアビー超えデカコーン企業の資金調達も話題となった。週末に世界のテクノロジー、ビジネスの話題をサクッとアップデートしよう。①エアビー、話題の「IPO手法」【9月19日(木曜日)】民泊大手のエアビーアンドビーは9月19日、新規公開株式を2020年に実施すると発表した。エアビーといえば、191カ国以上でサービス展開し、700万件以上の宿泊物件を扱うデカコーン企業(企業価値100億ドル以上の未上場企業)だ。直近の評価額は3.3兆円(310億ドル)とされる。今年は大型のIPOが相次ぎ、特にシェアリングエコノミーの代表格ウーバー(Uber)やリフト(Lyft)の上場は話題を呼んだが、上場後も赤字を垂れ流し、株価の推移は芳しくない。投資家たちは同じくシェアリング企業エアビーの成長性を注視する。その点、エアビーの売上高は2019年第2四半期に1075億円(10億ドル)を超えており、2017〜2018年は黒字だったというから安心材料だ。それよりも今回、エアビー上場を巡って注目されるのは、その「方法」にある。直接上場(ダイレクトリスティング)を採用すると複数の米メディアが報じている。これは、新株を発行せずに既存の株式だけを売りに出す手法だ。つまり、新規の資金調達を伴わないというのだ。そのメリットは、コストと時間の削減にある。新株発行を担う投資銀行に対し、多額の手数料を払う必要もなく、上場までの時間も短縮できる。しかし、である。そもそも上場の主な目的は、新たに資金を調達し、事業の拡大に生かすことにあるはずだ。実はこの手法、2018年に音楽ストリーミングのスポティファイ(Spotify)、2019年にビジネスチャットのスラック(Slack)が採用し、近年関心が高まっている。

資金調達の実力とブランドの知名度では文句なしのエアビー (写真:SOPA Images / Getty Images)スポティファイやスラックにおいては、未上場でも十分な資金を調達できており、通常の上場をする必要はない。そこで直接上場である。というのも、この直接上場であれば、既存の株主が上場後の一定期間、株式を売却できない「ロックアップ期間」がない。つまり、上場初日から株式を売却することができるわけだ。既存の株主が即利益を得られるようにする側面が強いとみられるゆえんだ。通常、ベンチャーキャピタル(VC)は、約10年サイクルでスタートアップへの投資を回収しようとするが、回収期間が短いに越したことはない。ロックアップ期間もなく時間も短縮できる直接上場は、VCにとって歓迎すべき方法なのだ。もっとも、デメリットもある。発行済株式数が少ない場合は、売買が成り立たない事態も起こることだ。

エアビーのブライアン・チェスキーCEOはスポティファイのダニエル・エクCEOに上場のアドバイスを求めたと伝えられている (写真:Richard Bord / Getty Images)より打撃を受けるのは、これまで伝統的なIPOを請け負ってきたウォールストリートの金融街だろう。何しろ、多額の報酬が得られるのが巨大企業のIPOだったからだ。今後、スポティファイ、スラックの事例から学び、エアビーに限らず直接上場という手法をとるスタートアップが増えることが予想されている。シリコンバレーの有力VC、ベンチマークのビル・ガーリー氏は、「これまでのIPOは古臭く、大きな銀行に利益が吸い上げられ過ぎている」として、この直接上場への強い支持を表明している。未上場でも多額の資金を集められる人気企業たちがいま、伝統的な金融システムをも変えていこうとしている。②北米初「ドローンで薬届けます」【9月19日(木曜日)】グーグルの親会社アルファベットの傘下にあるウイング(Wing)は9月19日、北米薬局チェーン大手「ウォルグリーンズ」や物流大手「フェデックス」などと提携し、商品をドローン(小型無人機)で配達する計画を明らかにした。実はこのニュース、「アメリカで初めてドローン配達が可能になった」と期待を持って受け止められている。というのも、意外にも北米では、ドローン規制が強いためだ。

ウイングの機体は重さ約4.5キログラムで、車やトラックよりも静かだというドローンは操作する人の視界に留まらなくてはいけないという厳しい規制があり、ドローン配達には高い障壁となっている。今回の実験は、バージニア州南西部の人口2万2000人都市、クリスチャンズバーグの住人が対象で、来月より導入を始める。配達するのは、商品、飲料、医薬品など約1.3kg(3ポンド)まで。ドローンにより、数分以内に配達が可能だという。ウイングのジェームズ・ライアン・バーゲスCEOは「ドローン配達に関わる技術(カメラなど)には、とても繊細な問題と懸念もある」としながら、実験を通してサービス向上、コミュニティとの関係を作っていきたいと話している。ドローンの配達を巡っては、規制の理由から海外での実験が先行しており、ウイングはオーストラリアの首都キャンベラ郊外で食料品の配達を始めている。

ジップラインのドローンまた、シリコンバレーのスタートアップ「ジップライン」はアフリカのルワンダとガーナで2万回以上の輸送を達成している。北米では、アマゾンウーバーなどもドローンを使った配送を考えている。しかしアマゾンでさえも、ドローン配達は2018年か2019年に実現するとしていたが、実験は海外での小規模なものにとどまっている。巨大テック企業の「お膝元」北米でドローンが本格稼働する日は、果たしていつになるか。③エアビー超え、期待の星が資金調達【9月19日(木曜日)】今や企業の評価額はエアビー超えだ。米サンフランシスコに拠点を置くオンライン決済のストライプは9月19日、新たに約270億円(2億5000万ドル)を資金調達したと発表した。出資したのはトップVCのセコイア・キャピタル、アンドリーセン・ホロウィツ、ゼネラル・カタリストなどで、驚くのはその評価額だ。シリコンバレーから熱視線を送られる未上場企業のエアビー、ビッグデータ分析の「パランティール・テクノロジーズ」などを上回る、その評価額は実に3.7兆円(350億ドル)だ。今回の調達により、その評価額は2019年初頭から50%も価値が跳ね上がった計算になる。

ストライプを創業したジョン・コリソン(左)とパトリック・コリソン(右)兄弟(写真:Bloomberg / Getty Images)ストライプは、ウェブ上で簡単なコードを組み込むだけで、クレジットカードを使ったオンライン決済を可能にするサービスを提供。ペイパルなどよりユーザーの使い勝手を圧倒的に良くできるのが爆発的な伸びの背景にある。セールスフォースリフトブッキング・ドットコムなどを顧客に抱え、近年の企業のオンライン決済需要を受けて急速な成長を遂げてきた。創業者はアイルランド出身のジョン・コリソンとその兄、パトリック・コリソン。二人はアイルランドの片田舎から米国に渡り、ともにハーバード大とMIT(マサチューセッツ工科大)に進学したものの、起業を機に退学。2009年にストライプを創業した。ジョン・コリソン社長は、IPOをする予定はないとしている。

ストライプ共同創業者、ジョン・コリソン氏(写真:Bloomberg / Getty Images)ちなみに、このような成長企業であっても頭痛の種はある。高騰し続けるサンフランシスコのオフィス賃料だ。エアビー、ウーバー、スラックが集まる中心部はその傾向が特に強い。ストライプは先月社員に向けメールを打ち、本社をサンフランシスコ中心から約18km(11マイル)離れたオイスターポイントに移転する計画を報告した。また、サンフランシスコ市は去年11月、大企業に課す税率を上げ、ホームレス対策にこれまでの2倍の財政を注ぎ込むと発表。移転すれば、ストライプにはこの増税を逃れるメリットも生まれる可能性がある。④アマゾンとEV新興企業がタッグ【9月19日(木曜日)】アマゾンのジェフ・ベゾスCEOは9月19日、アマゾンの気候変動への対策を明らかにした。2040年までに二酸化炭素の排出量をゼロにし、その計画の一つとして電気自動車(EV)を開発するリヴィアン・オートモーティブから10万台のトラックを購入することも発表。*リヴィアンのNYT記事は↓こちら。【進撃】テスラに挑む、新鋭「リヴィアン」の若きカリスマ2021年からアマゾンの配送に使われる予定で、2024年までにフル稼働させたいとしている。2009年創業のリヴィアンは「第2のテスラ」と言われるEVベンチャー。今年2月にはアマゾンなどが約750億円(7億ドル)を出資し、これまでに合計約2000億円(19億ドル)を調達している。このリヴィアン、まだ一台も車を生産していないのにアマゾンから大量の発注を受けたのには訳がある。創業者のR.J.スカリンジは弱冠36歳。MITで機械工学の博士号を取得し、2009年にリヴィアンの元になる自動車会社を設立した。かつて三菱自動車が北米からの生産撤退に伴い、2015年に生産を終了したイリノイ州の工場を買い取り、日本企業が築いた「資産」を使いながら開発を続ける期待の新星なのだ。

アマゾンがオーダーするリヴィアンのEVトラックNewsPicksは2018年2月、当時全く情報がなく、謎に包まれていたリヴィアンのスカリンジCEOのインタビューを、世界で初めて実現。そこではテスラの高級路線とは違う世界観を語っている。家族を簡単に車に乗せて楽しめるユニークな体験を作れる車を開発したいのだという。*スリカンジCEOインタビュー記事は↓こちら。ジャパニーズ工場をひっそりと買収した、米EVスタートアップジェフ・ベゾスはエネルギーについて、太陽光などの再生可能エネルギーで賄う割合を現在の40%から2024年までに80%にし、2030年には100%転換する方針も明らかにした。なお、このような発表の背景には今年4月、ベゾスCEOと取締役会に対して、4500人以上のアマゾン社員が、企業として地球温暖化問題に真剣に取り組むよう求めていたことがある。⑤ウィーワーク、IPOを延期【9月16日(月曜日)】アダム・ニューマンCEOは投資家を説得することはできなかった。シェアオフィス「ウィーワーク」(WeWork)を手掛けるウィーカンパニー(We Company)は9月16日、今月見込まれていたIPOを延期すると発表した。もっとも、今年中には上場したいとしている。

(写真:SOPA Images/Getty Images)評価額は1兆円〜1.3兆円(100億ドル〜120億ドル)になるとみられ、これは今年1月時点の評価額5兆円(470億ドル)のざっと5分の1になるから衝撃的だ。投資家は、赤字が膨らむウィーワークの事業の成長性、賃貸オフィス業としては割高過ぎる評価額、また創業者のアダム・ニューマンCEOに統治権が集中するガバナンス構造を問題視していた。*WeWorkの上場を巡る混乱の詳細は↓こちら。
【3分解説】時価総額5兆円「半減」は本当か今年8月、ウィーワークが証券取引委員会に提出した目論見書によれば、2019年1〜6月期の売上高約1600億円に対し、純損失が約960億円に膨らんでいる。さらにその目論見書では、ウィーワークが「テクノロジー企業」だという言葉が、なんと110回も出てくる。少なくとも現状においては、ウィーワークの実態はシェアオフィス業だ。典型的なテック企業のように、少ないアセットで爆発的にスケールするわけでもなければ、古い業界を根底から変える可能性も見えていない。そのため、難解なこの目論見書は、単に評価を高くつり上げたいがためではないのか、との指摘がなされていた。IPOを遅らせることを発表した数時間後、ウィーワークはニューヨークのチーム10人弱を解雇したと伝えられた。今年の春には300人が解雇されている。このニュースは、ウィーワークの財政的な厳しさを裏付けたのか。それともコストカットに努め、規律を保とうとしているのだろうか。

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