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【真相】ユニクロ・Amazonに負けない。ワークマンの「競争しない」PB戦略

2019/9/26今、国内で最も勢いがある「アパレルブランド」と言っても過言ではないだろう。ワークマン。作業服で圧倒的なマーケットシェアを握る職人向けの専門店だ。今年8月にはJPX日経400の銘柄に新規採用され、さらに、昨日9月25日にも上場来高値を更新、今ノリに乗っているブランドだ。

1979年に設立されたワークマンはこれまで、ガテン系の職人をターゲットに成長してきた。しかし3年前から販売を開始したプライベートブランド(PB)のアウトドアウェアやスポーツウェアが大ヒット。ガテン系から一転、おしゃれなイメージへと変身を遂げている。また、あまり知られていないが、ワークマンはホームセンターのカインズを運営するベイシアグループの一員でもある。NewsPicksは本日から2日間にわたり、ユニークな組織運営で成功するベイシアグループを特集。初日の本日は、ワークマンの商品開発などを統括する土屋哲雄専務取締役のインタビューをお届けする。過去のイメージから脱却せよ──昔は、「やる気わくわくワークマン」というテレビコマーシャルで、ワークマンは、田舎にある作業着のお店というイメージを持たれていた方は多いと思います。いつの間にかおしゃれになった。23年間「やる気わくわく」でやらせていただいてワークマンの知名度が上がったわけですから、とてもお世話になったCM。足を向けて寝られません。それはもちろんそうなのですが、23年というとCM界でも2位、3位の長寿です。これはいけないと思いました。私が2012年にこの会社に入って初めにやったのは、あの広告を止めたことです。材木を担いだおじさんが出てきて、ザ・作業服という感じでした。作業服でもかっこいいイメージに変えるために、まず最初にストリートダンサーを使って刷新しました。

──ただ、「やる気わくわく」のままでも業績は成長し続けていましたよね。それは、そうです。問題は作業服の市場を、日本全国で取り切ってしまったということです。2位が九州の無法松で50店舗、3位は北海道のプロノで約40店舗。約840店舗を持つワークマンのほとんど独占と言っていいでしょう。うちは約40年間競争しないでやってきました。ワークマンは、人口10万に対して1店舗あることが適正なブランドです。しかも地価が高い都心には出せない。そう計算していくと、国内では最大1000店舗です。今の840店舗からすると残りはあと150店舗くらい。ほぼ、限界です。現に近年は出店速度もどんどん落ちていました。だから、ブランドのメッセージを変えなくてはならない時に来ていた。そこで、これまでターゲットにしていた作業服としての用途だけでなく、「スポーツ」「アウトドア」などのマーケットをPBで狙う戦術に変えていったのです。私たちワークマンは自分たちがもともと持っている強みを生かして、新しい市場でどう戦っているのか、ポイントをお話ししましょう。作業服は「ロングテール」で売る前提として、作業服は季節性がない商品です。だから、一般向けのアパレル商品のように季節で売り切らなくてはならないわけではありません。──在庫管理もアパレルブランドと比べればそこまで気にしなくていい。おっしゃる通りで、我々にはセールもありません。それよりも、丈夫で機能面に信頼があることが大事です。加えて、職人にずっと使い続けていただけるように安くなくてはならない。だからワークマンはトレンドではなくて点数を絞り、長く価値が落ちない商品を複数年出し続けます。だいたい5年サイクルで商品開発をするのがポイントです。

トレッサ横浜店(写真:ワークマン)──アパレルというよりも、自動車のようですね。1年目にトライアルで小ロット作り、その売れ行きを見て、統計を基に2年目の需要予測を立てる。これを5年目まで続けます。マイペースですよね。ほとんどワークマンの独占市場だからこそできる戦略です。作業服は「ダサくない」──「デザインが良い」とテレビや雑誌で取り上げられていますが、具体的にどう商品開発をしているのですか。プライベートブランドの商品開発については、たまに外部のデザイン会社の方に入っていただくこともありますが、基本的には全て社員がやっています。うちのヒット商品の中に、メッシュが入ってストレッチも利く上下セット3000円の作業服があります。他のベンダーのスタイリッシュなワーキングウェアなら、9000円くらいするものです。これは、Amazonにも定価で負けないクオリティで、すでに400万着以上を売っています。このヒット商品ができてアマゾンに勝てるものが作れたので、次にデザイン性に注力する方に舵を切りました。デザインは他と比べて2年以上も遅れていたのです。──作業服をオシャレにしようと。それも角度を変えて、職人だけではなく、一般客がスポーツ、アウトドア、レイン向けとしても使える服を作ろうと。客層拡大を図り始めた4年前から、デザインが派手になっていきました。

(写真:ワークマン)新しいPBブランドの売上高は、2017年度は30億円、2018年度は55億円、2019年度の上半期だけで132億円と倍々になっています。結果、PBの比率は毎年10%くらい増えていっています。最終的には50%くらいを目指します。「Amazonに負けない」商品PB以外の商品については、私たちが特に他と違うポイントは、ベンダーをあまり変えないということです。一回一緒に仕事をすると、10年、20年というスパンで付き合います。国内にいるベンダーに至っては、38年前からずっと付き合いがある企業が半分以上です。──なぜ変えないのですか。ベンダーをコロコロ変えると、経費が余分にかかる。ワークマンのことを説明して、呼吸を合わせるのに5年はかかります。ワークマンの商品受注先の中で日本の主要ベンダー約30社については、注文書さえ出さない関係です。生産量をベンダーに任せていて、彼らが需要予測して生産したものを、全量買い取っています。無駄なことは全部廃して、彼らを信頼するのです。我々が売れ行きがいいPBを自前で作り始めても、30年40年の信頼関係があるので、仕入れを減らされない。社内では常々、「仕入先を大事にするよう」に言っています。

(写真:Barcroft Media / 寄稿者 via Getty Images)──PBは企画は社内でして生産を委託するのが一般的ですが、どのような仕組みで作っているのですか。PBの生産は、中国など海外のベンダーにお任せしています。そこについても、すでに10年の取引があるので、ワークマンの売り上げや倉庫などを見せて、需要や生産量の管理を少しずつ任せていっています。そして外に任せた分、社員のリソースを企画開発に向ける。現在は、社員の60%が商品開発を行っています。そういう戦略を積み上げて、Amazonに絶対に勝てる商品を作業服でもアウトドアでも増やしていく。私たちワークマンの強みは、「しつこい」「気が長い」ことだと思っています。ロングテールのビジネスなので、一度決めたアイデアは成功するまでやり続けられる。加えて、大きなマーケットは狙わないで、ニッチな市場で50も100も競争力の高い商品を積み上げて勝負していくのが得意です。低価格はブルーオーシャン──スポーツやアウトドアの領域は、有名ブランドがたくさんあり競争が激しいのではないですか。そういった領域は着心地などの機能面が大事で、一般的なアパレルよりも作業服に近い市場だと思っています。そのため、作業服をベースとするデザイン、品質などを個性として、定価販売で勝負できるのではないかと思いました。とはいえ事前に聞いていたのは、スポーツ・アウトドアの市場は「ブランドの寡占状態だから」ブランド力がないと買ってもらえないというものでした。

(写真:Xavier Laine / 寄稿者 via Getty Images)──ノースフェイスなら、防寒面など機能への信頼が厚い。そこにちょっと高くてもお金を払っている面もあろうかと思います。ここに我々が入っていけるのか。まさかワークマンでスポーツやアウトドアウェアを買うという選択肢は、消費者の頭の中にはないだろうなと思いました。一般向けも意識した商品開発を始めてから、品質は毎年2~3割ずつ改善されていた。だけれども売り上げは、3、4%しか伸びませんでした。そこで「商品ではなくて、売り方が悪いのだろう」と考え、ブランドを見直しました。スポーツウェア、アウトドアウェア、レインスーツと3つのブランドを作り個店ではなくショッピングセンターのようなついで買いが起きやすい場所に出店する戦略を描きました。そして2018年に、もともとワークマンで扱っている約1700アイテムのうち一般消費者もターゲットとした320品目を並べる「ワークマンプラス」の一号店を「ららぽーと立川立飛」に出店。想像以上にお客さんが入り、当初予定の2.5倍、年間で約3億円の売り上げになるペースで推移しています。正直なところ、私も社員もびっくりです。もともと広告宣伝のつもりで作った店なので、3年くらいのスパンで大成させようとしていましたから。ワークマンプラスは、これまでのワークマンの2倍以上の売り上げを作っている。今では約半分のお客様が女性です。──ららぽーとなどのショッピングセンターは、より既存のアウトドアブランドが強そうな場所ですが。ららぽーとに出店した後に気付いたのですが、スポーツ・アウトドアにおいてはノースフェイスなどのグローバルのハイブランドがいる高価格帯と、フランスの「Decathlon(デカトロン)」が強い低価格帯の2つのマーケットがあります。日本においては実は後者、低価格ブランドがぽっかり空いていました。そこで、低価格帯のマーケットにグローバルで強いデカトロンについて徹底的に調べました。彼らのビジネスを日本の市場規模に置き換えたら、どれくらいのポテンシャルがあるのか知りたかったからです。調査の結果、低価格帯の市場は4000億円くらいあることがわかりました。にもかかわらず、私たちがワークマンプラスを作ってから、脅威になるような製品が一つも出てきていない。しまむらが似たような商品を出されていますが、あくまで見た目が似ているだけで、全然違うものです。

2019年9月に行われた過酷ファッションショー(写真:ワークマン)真似しても、「丈夫さ」「作業服のデザイン性」「原色の使い方」の共存は難しい。他者はうちに追いつけないということなのだと思います。気がつけば「ユニクロ超え」印象的だったのは、ワークマンプラスの一号店を出した時のこと。商品部の人間が全員、オープン時に店に来ることになりました。私はその機会に、同じ施設内のユニクロに連れて行き、「これだけ負けている」と、講釈を垂れようと思っていました。でも実際に店をオープンさせてみたら、ワークマンの店の方が派手で今風に仕上がっていた。従来のワークマンでは、マネキンを使っていませんでした。コーディネーションするという発想がなく、オフィスにはマネキンが1体もありませんでした。──PBなどのアウトドアウェアなどをマネキンに着せてみると、意外と格好良かった。マネキン0の会社がマネキンだらけの店を出して、はた、と気づいたということですね(笑)。ちょうど、秋の初めだったからですかね。ユニクロの店頭は、地味な色合いでした。一方、ワークマンは派手な原色を使います。

(写真:NurPhoto / 寄稿者 via Getty Images)昨年、「こんなものを作って…」と、私が絶句したトカゲ柄の商品があったのですが、その店ですぐに売れました。スポーツウェアも割と原色が多いので、そっち風に見えなくもない。ふたを開けてみたら、アスレジャー風というか、若干、裏原宿的な感じに仕上がっていたわけです。小島健輔さんというファッション評論家によると、我々のデザインはストリート系だそうです。「裏原宿の3代遅れ」と言われましたけれど、ストリート枠に入っていますからね。「ストリート路線っていいんだ」と自信になりました。これから出す新店舗は全て、ワークマンプラスにする予定です。今、どの店舗を改装したら一番売り上げが上がるかを洗い出しています。ワークマンプラスは、見せ方が違うだけで、実は置いてある商品は従来のワークマンにあるものです。低迷していた東海地域で3店舗をワークマンプラスに改装したら、取材がたくさん来てお客さんが大量に押し寄せ、行列ができてすごいことになった。

(写真:ワークマン)さらに、「ワークマンってこう変わった」と認知していただけて、既存の店舗も来店客数が増えました。3店舗を改装しただけでうまくいくなら、他のお店は急いで改装しなくてもいいでしょう。社員に残業をさせたくないので焦ってやりたくありません。今期は77店舗改装することが決まっているのですが、省力化に力を入れている会社なので、厳選しているところです。実はユニクロ超えはそれだけではなくて、原価率にもあります。ワークマンの商品の原価率は64%。ユニクロは昔は40%で今は35%ですから、同じ値段でも原価率の高いワークマンの品質には、ユニクロは勝てない。それも、小島健輔さんというファッション評論家がおっしゃっています。一店舗で「2つの」見せ方ワークマンプラスの店舗にはもう一つ、ポイントがあります。それは、二毛作です。昼は喫茶店、夜はスナックを営む飲食店がありますよね。それと同じで、違う属性のお客さんに、それぞれ別の時間に来てもらうのです。──昼と夜で顧客ターゲットを変えると。そもそもワークマンは作業服がアパレルに近づいたものなので、派手な商品を見ても、職人は自分たち向けの商品だと認識してくれます。一方、一般のお客さんも、作業服を見ても半分くらいはスポーツウェア風なので、自分が着られる商品だと認識するのです。

ワークマンの商品開発などを統括する土屋哲雄専務取締役それぞれ同じ商品を見て、自分たちをターゲットとした商品だと思うわけです。また、作業服を求める職人は朝早くに来ます。彼らは朝の限られた時間に、5分で買わないといけない。職場に向かう途中で立ち寄りますから。帰りは一杯飲む前で、浮き足立って値段を見ないで買う人が多い。一方で一般客は、職人と比べると滞在時間が長く、駐車場の回転が悪くなる。ですが、来るのは昼間です。つまり時間と用途が全く違うのです。そこで今、朝昼夜で看板を変え、店の内装や音楽などの雰囲気を変える企画を考えているところです。以前、2025年には1000店舗を目指すと言っていましたが、相当前倒しで達成できるでしょう。店舗数は1000ではなく、2000くらいまで目指せるようになると思っています。店の在り方も商品の作り方も変えて、ニッチな世界に刺さり続けるワークマンを目指します。

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