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上司に案を却下されたとき、やってはならないことは

今月4日にNewsPicksが新たに立ち上げたレーベル「NewsPicksパブリッシング」より書籍を刊行した埼玉大学大学院准教授・宇田川元一氏。パーソナリティはNewsPicksアカデミア編集長・野村高文と記者・岡ゆづはでお送りします。

野村 先週に引き続き、今週のゲストは、埼玉大学大学院准教授で、経営学者の宇田川元一さんです。よろしくお願いします。宇田川 はい、よろしくお願いします。野村 宇田川さんは、今月4日に新書籍レーベル「NewsPicks パブリッシング」より、『他者と働く──「わかりあえなさ」から始める組織論』を刊行されたばかりです。今、書店店頭には新刊本が並んでいます。

宇田川元一(うだがわ・もとかず)
1977年、東京生まれ。長崎大学、西南学院大学で教鞭を取った後、現在は埼玉大学大学院で准教授を務める。経営戦略論、組織における対話についての研究を主に行っている。他者への「怒り」を楽しむ野村 先週は『他者と働く』で取り上げられている、「ナラティヴ・アプローチ(事象に対する個々人の解釈の違いを認知し、理解する方法)」についてお聞きしました。今回は、他者との対話で直面し得る「壁」の対処法や、失敗パターンなどをお聞きします。宇田川 そもそも、対話の上で直面する課題には、「対話できない課題」があります。例えば、上司に提案を無下に却下されたときに「彼は保守的で、権威主義的だから」と解釈して何も進まないという状況です。これは、結構陥りやすい。野村 「権威主義的」ですか。宇田川 上司に対して「権威主義」とラベル付けをしてしまって、なぜそう言ってきたのか「観察」ができていないんです。ひょっとすると、自社のメインプロダクトに突如として競合が現れたため、営業部門が大騒ぎになり、開発部門が新しい製品を提案しても、営業はそれどころではない、という状況があるかもしれないですよね。きちんと観察すれば、そうした情報を提供してくれる人は必ずいるのですが、そこに踏み込めないといいアイデアが浮かんでも実現はできません。 確かにあり得ますね。しかし、ニュートラルな視点で相手を見るのは少し難しそうです。宇田川 トリッキーな答え方をすると、「ニュートラルの人間はいない」と認めるべきです。つまり、自分も相手もお互いに偏りがあることを認め、きちんと向き合うことが大切です。

野村 感情がバイアスになる可能性もありますよね。例えば、目の前にムカつく人がいると「この人、ムカつくな」と思って、その人が発言したことへの解釈が歪んでしまいます。そのときは、どうすればいいでしょうか。仏のような心を持つべきですか(笑)宇田川 そんなことはなくて、「怒る」ことも大事だと思いますね。「怒る」とは、自分の中で大事にしたいものが侵害されている状態なので、感情を無理して抑える必要はありません。むしろ、なぜ自分がそこに対して怒るのか、何を自分は大事にしようとしているのか、を考えるきっかけにするのがいいでしょう。あとは視点を反転させて、「自分がこの人を怒らせるとしたら、何をするかな」とか、「この人に自分がムカつく行動をさせるには、どうしたらいいかな」と想像してみると、お互いの背景がわかってきて、取り組みようがあることが見えてくると思います。新規事業は、なぜ「潰される」のか野村 宇田川さんは、組織論について研究されています。そこで、本書でも言及されている「新事業が潰される」組織のメカニズムについてもお聞きしたいです。たとえば新規事業部門は、リスクを取って儲かるか儲からないか分からない事業に取り組んでいます。しかし、予算を持つ既存の事業部は、「自分たちが稼いだお金で、あの人たちは楽しそうなことをしている」と思うことが多い、と本書でも指摘されています。この「断絶」はどうやって乗り越えられるのでしょうか。宇田川 結論から言うと、(新規事業部門が)既存の事業部に「どうやって味方になってもらうか」をきちんと考えるのが大切です。新規事業開発が会社にとって不要だと考える人は、あまりいないはずです。みんな総論では賛成なんですが、各論では反対してしまう。だから、既存の事業部に新規事業がどういう貢献ができるのかを提示できれば、協力を得られます。しかし、「社長が協力しなさいと言っているから」と歩み寄りを求めるのはよくないです。確かに正論なんですが、社長がお墨付きを与えている状態は、(既存の事業部からすれば)羨ましかったりしますよね。しかし、そうした正論で防衛しようとしている時は、相手と対話をできていない証拠なんです。

 正論なのは分かるけど、納得してもらえないことはありますね。宇田川 そうですね。僕は、15年前に小さな会社の経営者だった親父を亡くしましたが、彼に一番腹が立ったのは「お前の言うことは、学者の戯言だ」と言われたことです。「正論なんだけど、役に立たない」って言われた気がしたんですね。ちゃんと知識や技術を根付かせないと、経営学は経営にとって意味がないということはもちろん分かるんですけども。野村 そう言われたとき、宇田川さんはどういう反応をされたんですか?宇田川 まだ未熟だったので、一週間ぐらい口をきかなかったですね(笑)野村 割と派手に怒りましたね(笑)。でも、経営者と経営学者の「断絶」はありそうです。経営者にとってはビジネスにおける全ての事象が「n=1」で、それを乗り越えないと成り立たない。一方で、経営学者はさまざまな事例に通底する普遍的な法則性にフォーカスします。宇田川 そうですね。ただ、普遍的な法則で解けない問題が日本の企業社会にはたくさんあります。そこに着目するのが、僕の経営学者としてのスタンスです。本に込めた「願い」岡 宇田川さんが、「この対話の仕方はうまいな」と思われた事例はありますか。宇田川 それは、ぜひ本を読んでいただきたいんですが(笑)例えば下から上への提案であれば、ちゃんと事業戦略を理解していくことが大事です。そして、全社的な戦略や事業戦略にとって、自分の提案は意味があると示すことです。それと、上司に当事者になってもらうこと。(上司を)外側の批評者にしておくと、無責任にいろいろ言われてしまいますからね。当事者になってもらうときは、相手にその責任の一部を委ねるのもポイントです。周りの人の意見を提案に反映させながら、一緒に作っていると相手に想像させます。それが「対話」だと思うんです。

野村 分かりました。最後に、本書でもっとも訴えたいメッセージを教えて下さい。宇田川 まず、どういう人に読んでもらいたいか申し上げると、行き詰まりを感じている人、会社の中で八方塞がりだなと思っている人です。もっと対処する方法があることに、気づいてほしいですね。それと、本を通じて「もっと希望がある」ということを伝えたい。僕は、「希望」の反対語は「願望」だと思っています。 「失望」ではなく、「願望」ですか。宇田川 「願望」とは、自分が今思っていることが、そのまま叶えられる状態です。一方「希望」は、今ベストだと思っていることが、暫定的であることを受け入れて、その外側にある何かを諦めないということ。だから八方塞がりだと感じていたら、その外側、つまり対話の過程に希望があると気付いてほしい。その手引きになるものとして、この本が届いてくれたらいいなと思っています。野村 なるほど。もともと自分が想像していた範疇の外に、ひょっとしたら新しい道が開けるかもしれないということですね。

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