イランの国立アザディスタジアムで10日に行われるサッカー・ワールドカップ(W杯)予選の対カンボジア戦で、40年ぶりに女性の入場が正式に認められる。
報道によると、女性の観客に割り当てられたチケット3500枚は1時間以内に売り切れ、追加で1100枚が売り出された。
サッカーに詳しい作家のジェームズ・モンタギュー氏は、「イランのサッカー界にとっても、つかまって刑務所に送られる危険を冒しながらも抗議を続けてきたイラン人女性にとっても、大きな歴史的瞬間」と位置付ける。
女性のスポーツ競技場への入場を禁止する措置は、1979年のイスラム革命後に導入された。これに対して国際サッカー連盟(FIFA)のインファンティノ会長が「容認できない」と発言、2022年W杯に向けた予選では、禁止を解除するよう促していた。
イランのファルス通信によると、女性用の座席は男性とは切り離された区画に設置され、女性警官150人あまりが目を光らせる。ソーシャルメディアには、女性専用区画の周りにフェンスが設置されている写真が投稿された。
10日の試合で女性ファンの観戦が認められたことは1歩前進といえそうだが、人権団体のヒューマン・ライツ・ウォッチは女性の観戦者に4600人という上限があることについて、見せかけだけの差別的な措置だとして批判、女性差別を禁じたFIFAの規定に違反すると指摘している。
イラン女性がガソリンをかぶって焼身自殺

2019.9.11
女性のスポーツ観戦が禁止されているイランで、サッカースタジアムに男装して入ろうとしたところを見つかって拘束され、焼身自殺を図った女性が9日に死亡したことがわかった。
国際人権団体アムネスティ・インターナショナル(AI)の10日の発表によると、サハル・ホダヤリさん(29)はイスラム教徒の女性が髪を覆うスカーフ「ヒジャブ」を着用せず公共の場に出た罪に問われていた。先週出廷し、裁判が休廷となった後、体にガソリンをかぶって火をつけた。
同国では1979年のイスラム革命以降、女性のスポーツ観戦が禁じられている。
ホダヤリさんが自殺を図った後、国際人権団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は国際サッカー連盟(FIFA)にあてた声明を出し、イランは女性の観戦を解禁するべきだと主張。FIFAが独自の人道的ルールを適用するよう呼び掛けた。
HRWが家族の話として伝えたところによると、ホダヤリさんは双極性障害(そううつ病)を患い、収監中に病状が悪化していたという。
ソーシャルメディア上では、ホダヤリさんを「ブルー・ガール」と名付けて死を悼む書き込みが相次いだ。ホダヤリさんは生前、イランの首都テヘランを本拠とするエステグラルFCのファンだった。青はそのクラブカラーだ。
FIFAは声明で遺族らに弔意を表し、イラン当局に対して観戦解禁を求める女性らの自由と安全を保証するよう求めた。
FIFAは今年6月、イランサッカー協会への書簡で、女性の観戦解禁に向けた行程表を要求。イラン側はこれに対し、具体的な期限は設けていないとしたうえで、女性をスタジアムに入場させるためのインフラ整備を進めていると回答していた。
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