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【佐久間洋司】VTuberの「人格」はどこにあるのか?

2019/10/29キズナアイの人格バーチャルYouTuber(VTuber)はご存じでしょうか?キズナアイや輝夜月などが特に有名ですが、最近ではテレビ番組や自治体などが公式キャラクターとして企画していたり、音楽を中心に据えたアーティストのようなVTuberのデビューも増えてきています。

ご存じでない方のために説明すると、その名の通りバーチャルなキャラクターがYouTuberとして活動するのがVTuberです。ブームは2018年ごろに始まったばかりですが、現在は6000人を超えるVTuberが活動しているといわれています。これほど多くのVTuberがYouTuberを上回るような速さでデビューしている理由として、「顔出し」をしなくても活動できるということが挙げられます。表情や身体の動きのデータを取得する技術を用いて、アニメのキャラクターのような3DCGモデルを動かして、いわゆるYouTuberのような活動をしています。視聴者からすると、このようなセルルックなアバター(VTuber)だけを動画上で見ているため、その向こうにいる演者本人が顔を見せて動画を撮影しなくても活動ができます。

ここで特に面白いのは、この収録のときに「声と動きを別に当てることができる」ことです。VTuberでは声優が声を当てていることが多いですが、動きだけは別のスタッフが当てることもあります。しかしながら、これを視聴しているときはあくまで1人の人格かのように見ているわけです。これは言い換えれば、まったく気づかれる余地のない二人羽織のようなものかもしれませんし、1つの身体に2つの脳が共在して1人が話して1人は身体を動かしているのかもしれません。いずれにせよ私たちがそのようなキャラクターを見るときに、どこに人格を見いだしているかは興味深いです。自分自身をバーチャル化今回のようにVTuberがブームになることで浮き彫りになった、アバターを取り巻く疑問を研究したい、そしてアバターによる未来のコミュニケーションについて考えたいと思い、僕自身を「バーチャル認知科学者」なVTuberとしてデザインしていただくことになりました。

MUGENUPのご協力のもと、イラストレーターのモグモさんにデザインしていただいたのがこのキャラクターです。これは初公開になるのですが、本連載の第1回とこの第3回のバナー写真で並んでいる3DCGモデルはPunch Entertainment Co., Ltd.に制作していただいた最新のアバターです。

さきほどお話ししたように複数の人間で声と動きを当てたら、視聴者から見てそこにいるのは誰なんだろうか、身体転移を応用して有名なVTuberになりきったら、もっと好きになるんだろうか、この身体を通じて研究していきたいと思っています。今回はキズナアイなどVTuberと並べても実験上違和感がなく、しかしあくまで「僕をモデルにした」デザインを実現していただきましたが、そもそもはハンドルネームやアイコンに始まって抽象化されてきた私たちのアバターを考えることにもつながります。将来的にはオリジナルの個人とはまったく異なる、声や容姿を克服した真に抽象化された人類による、新しいインタラクションがあるのではないかと思っています。

このプロジェクトを始めるにあたって惜しみなくいろいろなことを教えてくださったZIZAIの塚本大地さん、荒木友治さん、GREE VR Studioの白井暁彦先生には本当に感謝しています。自分のアバターを誰かが操作トップVTuberのキズナアイの声優は、ある時期から交代制をとっています。視聴者が、そこに抽象化された「キズナアイ」という一つの存在を見いだしていることは不思議なことです。しかしながら、僕がここで自分のアバターを制作してもらってまで知りたかったことは、キズナアイを演じる声優の方ご自身の人格の行方でもあります。長年VTuberを演じてきた演者の皆さんは、半ば自分自身としてアバターをまとっていく中で、アニメの声優とは異なりそれが自分自身であるという認識が少なからず芽生えているはずです。そこに自分以外の演者がいることで何が起こるのだろうか?孫正義育英財団の先輩方との議論では、「さながら多重人格的に、自分のアバターを操作する他者のことを自分の他人格のように感じ始めるのではないか」というコメントもいただきました。まずそれを自ら体験し、検証していくためのバーチャル認知科学者という身体になるわけですが、キズナアイのように長年のロールプレイによってそれを自分として感じるのではなく、僕自身を「実名本人をバーチャル化」するという前提に立ってデザインすることでこの体験を実現することを考えました。

例えば、バーチャルアナウンサーの相内ユウカの例でも、ご本人もアナウンサーであり、本人を元にアバターにしたのが相内ユウカであるという形になっています。その身体の操作に他者を巻き込んでいることがポイントです。

実は最初にお話ししていたドッペルゲンガー的な研究とも相性はよく、モーション学習させて生成する動きと、リアルタイムにトラッキングしている動きの区別がつかなくなれば、動きの収録なしに動画配信ができることにもなるかもしれません。

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