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【新】30、40代へ。若者を潰す「教養のない」大人になるな

2019/10/29まるで預言者のように、新しい時代のムーブメントをいち早く紹介する連載「The Prophet」。今回登場するのは、earth music&ecology(アースミュージックアンドエコロジー)などのアパレルブランドを展開するストライプインターナショナルの石川康晴社長だ。ビジネスパーソンに向けてわかりやすくアートを学ぶ必要性を説いた『学びなおす力 新時代を勝ち抜く「理論とアート」』(PHP研究所)が30代、40代を中心に支持されている。山口周氏の著書『世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?』(光文社)をきっかけとして、ビジネス界でもアートをはじめとした複雑な思考が求められるものを学ぶ必要性が、広く認識されるようになってきた。アートはなかなか近づきにくい世界だが、MBA(経営学修士)を持つ経営者であり、現代アートのコレクターとして岡山芸術交流のプロデュースにも携わる石川さんの解説は、ビジネスパーソンに腹落ちしやすい。ビジネスの理論とアートを掛け合わせることで、多角的な視点を持ち、社会との関係を見極め、不確定な未来に向けて、「いい」ジャッジをしていくための歩みを進める方法が著書では語られている。そこには、AIが普及した後の世界を生き抜くためのヒントが詰まっている。

石川康晴(いしかわ・やすはる)/ストライプインターナショナル社長。1970年岡山県生まれ。岡山大学経済学部卒、京都大学大学院経営学修士(MBA)。1994年、23歳で創業。95年クロスカンパニー(現・ストライプインターナショナル)設立。99年にearth music&ecology(アースミュージックアンドエコロジー)を立ち上げ、SPA(製造小売業)を本格開始。30以上のブランドを展開し、グループの売上高は1300億円を超える。公益財団法人 石川文化振興財団の理事長も務め、地元岡山の文化振興に力を入れる。10代はアート思考を学んでいる──石川さんが学び直しを勧める理由を教えてください。石川 2つあります。最も危機感を感じているのは、教養のない30代、40代が、若者を潰す未来が来るのではないかということです。彼らは、教養を軽視された時代に教育を受けています。だから感性が鋭くないし、思考が浅い人が多い。そもそもこれまでの日本の教育は総じて暗記を前提とした詰め込み教育でした。しかも、団塊ジュニア世代以降は、景気が良くない時代に育ってきたこともあり、ガリ勉で、勉強だけしてきた人が多い。ファッション、デザイン、建築、アート、ワインなど、なんでもいいのですが、文化的で「1+1=2」という単純な答えではない感性が必要なものから、ずっと逃げ続けてきた。その一方で、2020年には義務教育の内容が変わり、現代的諸課題といった答えのないものを考えさせる授業が始まります。すでに答えのない授業は一部の中学校や高校で始まっています。私も何度か学校見学に行きました。オレンジ色の紙の上に青い線がぴっと引かれたアートを見せて、「どう思いますか」と先生が生徒たちに問い掛けていました。

(写真:SDI Productions/iStock)そんな授業を一流大学を目指す東京の開成、麻布、名古屋の旭丘などの中高一貫校がやっています。最初の1、2年は想像力やデザイン思考を鍛えるようなことをしていて、3年かけて鍛えます。私たちが受けてきた授業とはもう全く違うフェーズに入っています。──そのような授業をやっているのはトップレベルの学校だけでしょうか。いやいや、そんなことはありません。商業科や工業科などの高校でも始まっています。詰め込み教育だけで、教養の浅い30代、40代が組織の中で上に立つようになってきた頃に、ロジカルシンキングやデザイン思考など国際水準の教育を受けた子たちが入社してくるわけです。「おもろくない」とやばい30代、40代の想像力のなさが、バランスのいい若者を潰し始める時代が来ます。100%潰します。それは、会社そのものを潰すことにもつながるでしょう。そうならないために、自分自身でまず自覚してほしい。「このままだとまずい」ということを言いたいのです。自覚していれば、今からでも間に合います。ワインもアートも、およそ感性や想像力が鍛えられる文化的なことから逃げてきて、「こんな事例があるので、これが正解だと思います」と単純なロジックを組み立てているような、多様性とユニークさのない方。「俺はダサい」「想像力が乏しいから、森美術館に行ってレベルアップしないとまずい」とね。──ダサいと気づくサインはありますか。一言で言うと、人と同じ意見しか話せなくなったらダサいでしょう。おそらく99%の人がそうだと思います。「あの部長おもろいよね」と言われる人になれるかどうかです。おもろい人は、何事にも積極的にチャレンジするので、情報がたくさん集まってきます。失敗を恐れず、他人の悪口も言いません。だから当然、人望も集まるのだと感じています。

(写真:syolacan/iStock)──でも、今の企業では「おもろい」を評価するKPI(業績評価の指標)がありません。まあそうですね。でも結局、真面目でKPIだけを追いかけている人間は、KPIには届かないんですよ。例えばマーケティングでも過去のケーススタディだけで組み立てるのではなくて、誰もやらないようなユニークなことをした方が反応があるでしょう。その結果としてKPIに達することが多い、と私は思っています。ケーススタディだけで組み立てていくガリ勉ちゃんは、もう全部8掛け、9掛けになる。これからはもう、「ケーススタディ型」「偏差値の高さ」で勝ってきた人の時代は終わります。「想像力」こそ生き残る源もう一つの理由は、ここにあります。これから本格的にAI(人工知能)がビジネスの現場に普及すると、過去のデータから最適解を導き出すような能力は、人間に求められなくなります。アパレル業界で言えば、在庫・発注のコントロールでは、まずAIが使われるようになる未来が見えています。これまでの10年、20年分くらいのデータをAIに学習させれば、3年くらいでほぼ最適解を出せるようになるでしょう。そうしたら0.1秒で過去からの最適解は弾き出せる。AIは過去のデータ分析においては、究極的に人間に勝っていますから、意思決定に多くの人間が関わって、最適ではない意思決定がなされていた時のむだがなくなります。そのAIバブルは流通業において、3〜5年で終わりますから、問題はその先です。人間は未来を考えることに集中します。

未来を導き出す「想像力」や「デザイン思考」「センス」を持った人材がどれほど在籍しているかが、経営を左右することになっていく。AIが導き出す過去と、人間が考える未来のハイブリッドで、戦略を立てていく。書籍では現代アートの学びに寄せた文脈にしていますが、要は「想像力を鍛えないとまずいですよ」ということが言いたい。異業種の人と会い続けることも、刺激の連続だと思いますし、芸術祭に行って、気に入った作品を30分見続けて、自分の思考を深めていくものいい。そういうことができるようになれば、多分単純なビジネスパーソンにならずに、いろんな人の意見を受け入れて、生かしていけるような人材になれると思うのです。ではなぜ、想像力を鍛えるために、中でも私が特にアートを勧めるのか、明日お話ししましょう。

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