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【藤野英人】次世代に伝えるべき「マネーリテラシー」の本質

2019/10/27投資家視点で「人生を切り開く戦略」を提案する、カリスマファンドマネジャーの藤野英人氏。インタビュー最終回では、投資の考え方を人生に応用する、具体的なメソッドを紹介してもらおう。人間関係のポートフォリオを組む──投資の世界では「分散投資」のメソッドが有効とされています。人生を送るうえで、分散投資の考え方はどのように応用していくとよいでしょうか?藤野 投資ではリスクとの向き合い方が一つのカギになりますし、分散投資はその有効な手段と言えるでしょう。一方で、人生においては分散に向いていないものもあります。恋人なんかは、その最たるものですよね。A子さん、B子さん、C子さん、D子さんと、恋愛する努力や時間を注ぐ先を分散するのは難しい。2人に絞って二点分散も非常にマズい(笑)。僕が、人生の中で分散した方がいいと思うのは「人間関係」です。希望を最大化する人たちは、年をとっても考え方が柔軟で、一緒に話をしているといつも若々しいなと思わされます。それは、楽な人間関係に流れるのではなく、若い人や年配の人とも付き合い、刺激や学びを得つづけているからでしょう。人間関係を分散するには「年代・職業・性別」を意識してズラすようにするとよいと思います。「今月は若いやつらと絡んでいないな」とか「このあいだは流通業界の人に会ったから、次は小売業界の人の話を聞いてみよう」みたいな感じで、意識的に人間関係のポートフォリオを組むようにするのです。

読書は精読と乱読のミックス投資で何より大切なのは、分散投資であろうと集中投資であろうと、その対象に「価値」があるということ。中身のないものばかりに投資しても絶対に成果は上がりません。ある程度分散するにせよ、自分が「納得できるもの」に投資することを意識すべきです。なおかつ、自分が「理解できるもの」に投資すること。理解できないものに投資した場合、失敗しても成功してもそれは偶然でしかなく、原因がわかりません。したがって、2度目の失敗を防ぐことも、成功の確率を高めることもできない。自分が理解できるものに投資をすれば、成功と失敗の背景もわかるようになるので、それが自分の付加価値になります。

──たとえば自己投資として、まったく門外漢の分野の本を読んだりするのはどうでしょう?勉強については、理解できないものを読みつづけるうちに、あるとき「わかる瞬間」が訪れることもあるので、何とも言えないですね。世の中には様々な読書術があると思いますが、個人的にはその時期の自分の状況に応じて、精読と乱読をミックスすることが大事だと思います。自分の守備範囲の分野で精読を続けるべき時期もあれば、乱読によって知見を広げるべき時期もある。ちなみに、最近の僕はほぼ乱読です。本は「シェアリングエコノミー」僕は、本こそが、この世の中でもっとも投資価値が高いものだと思っています。本とは、ものすごい労力で著者が手に入れた知見を、多くの人がシェアすることで、薄いお金で購入できる商品。1万部を印刷したら、その著者の考えが1万人に分配される、まさにシェアリングエコノミーなんです。本を読むことが大切なのはもちろん、本を買うこと自体にも大きな意味がある。よく、「すみません、本は買ったんですがまだ読んでいません」と著者に言う人ってどうなの? みたいな話がありますが、僕は全然OK。それより「図書館で借りて読みました」と言われるのは悲しくなりますね。

(Eva-Katalin/Getty Images)──お金が動かないわけですからね。国民の読書量や、書籍の購入点数が減っていけば、間違いなく国力は落ちていきます。日本では電子書籍の売上を足しても、出版業界の売上は下がり続けていますが、アメリカなどでは出版業界が今でもちゃんと伸びている。書籍の文化にお金が回ることが大切なので、僕は「読まなくてもいいから、とりあえず買おう」と言いたいです。僕は好きな本は10冊ほど購入して友人に配ることもありますし、リアルの本とKindle版の両方を買って、状況に応じて読み分けることも多いです。あと、本って最高のインテリアなんですよね。花を活けない花瓶を飾るのと一緒で、インテリアとしてのバリューもある。「インテリアなのに読むこともできる」ぐらいの感覚で買ってほしいですね。

子供たちに「小商い」の体験を──今回のインタビューの第1回の冒頭で、国民のマネーリテラシーの想像以上の低さにショックを受けた……という話がありました。今後、日本の子供たちが教育によってお金に対する健全な感覚を育んでいくためには、どのようなアプローチが必要になると思いますか?小さな頃から「働くこと」を体験することが大切でしょうね。それも、よくある「お仕事の体験学習」ではなく、自分で何か工夫をすることで売上が変わるような「小商い」をしてみるのがいいと思います。アメリカでは、子供たちがレモネードを売ってビジネス感覚をつかむ、みたいなことをよくやりますが、あれに近いですね。自分で作った何かを売るとか、あるいは物々交換のやりとりなどでもいいのですが、コミュニケーションしながら価格を形成するという経験をすることで、「物の価値は人気や交渉によって決まるもの」ということが体感的にわかるようになります。この感覚は、ビジネスで成功する、あるいは投資で成功するためには非常に大切ですし、なにより「働くことの楽しさ」を知るという意味でも重要だと考えます。自分のコミットメント次第で成果が変わるという経験は、そのまま働くモチベーションにつながりますから。

(Frank van Delft/Clutura)働くこと=会社への所属という誤解──いまの現役世代には、「働くこと=嫌なこと」と捉えている人が残念ながら少なくありません。この流れを次世代に引き継がないためには、何が必要だと思いますか?働くことの意味自体を捉え直すことが必要でしょうね。いまの親世代にとって、働くことは「どこかの組織に所属すること」というイメージが強いはず。小学校、中学校、高校、さらには大学と学校に所属してきて、その延長線上に「会社」があるというイメージです。会社には、学校の先生の代わりに上司がいて、宿題の代わりに与えられたタスクがあり、同じように「いい成績」を取ることが求められる……みたいな感じでしょう?子供に「なんで勉強するの?」と聞かれたときに、「いい会社に入るため」と答える親は、そういう「所属先」として会社を捉えているはずです。

──そういう親はきっと多いでしょうね。もちろん、「組織に所属すること」も、働くことの一つの側面ではありますが、それは決して本質ではありません。本来、働くことは「価値を作り出すこと」です。働くこと=組織への所属と考えている人は、そもそも会社が好きではないし、労働は悪だと考えている。その延長で、投資も汚い行為だと思ったりするのでしょう。一方で、起業の経験がある人や自営業の人に、労働が悪だというイメージを持っている人は少ない。彼らは、自ら価値を作り出すという行為を日々続けているからです。その意味でも、子供の頃から小さな商売を体験して、「主体的に」仕事と関わるという体験をすることが重要になってくるのではないかと思います。

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