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【厳選20校】名門ボーディングスクールに、入学する方法

2019/10/31

国境を超え、教育熱心な親たちを魅了する名門ボーディングスクールでは、どのような教育が施されているのか。

5年間で日本の公立小、中東のアメリカンスクール、イギリスのプレップスクール(私立小学校)と子どもの教育環境を変えてきたライターの黒田順子さんは、長男の入学先としてイギリスのボーディングスクール(全寮制私立中高一貫校)を選択した。

その経験から、国内でも注目が高まるボーディングスクールの最新事情をリポートする。入る前に学ぶべきことイギリスには約500校のボーディングスクールが存在していることをご存じだろうか?日本のような通学制の学校もたくさんあるものの、教育熱心な家庭はいまだに「ボーディングスクール」を選ぶ。学校の近くに自宅があっても、子どもは家から出て、寮生活を送る。それはなぜか。イギリスのボーディングスクール、中でも13歳からの「パブリックスクール」と呼ばれる厳選された私立の中高一貫校は長い歴史の中で大切に守られてきた文化の一部であり、エリート育成機関の頂点だと考えられているから。

photo:Memitina/iStock今も昔も法曹界や政治、ビジネスの世界にとどまらず、演劇界、スポーツ界にいたるまで各界でリーダーとなる人材の育成を目標のひとつに掲げ、どの学校も豊富な資金力を背景に質の高い教育を子どもたちに与える。それを信じて、親はボーディングスクールに5年間、子どもを預けるのだ。ボーディングスクールを目指すイギリスの子どものほとんどは、7、8歳になった時点で、プレパラトリースクール、略して「プレップスクール」に入学する。そして6年間かけてボーディングスクール入学への準備を整える。ではプレップスクールは子どもたちに何を教え、どのような13歳になるように導くのか。そのポイントは大きく2つある。まずはここからリポートを始めたい。

プレップスクールには「メリット」という生徒の評価システムがある。授業中に積極的に発言する、年下に優しくする、ラグビーでチームに貢献するなど、先生がプラス評価した「その時」にご褒美として「1メリット」をもらえる。そのメリットの個数が増えるごとに、ブロンズ、シルバー、ゴールド、ダイヤモンドと航空会社のマイレージのようにステータスが上がり、朝会ではステータスが一目でわかる小さなバッジが校長先生自ら授与され、子どもは得意げにそのバッチを胸に着ける。このシステムが素晴らしいのは、その子なりの「進歩」を評価してメリットが与えられる点だ。優等生だからたくさんもらえるとは限らない。「9が10できるようになる」より「0が3になった」ほうが評価されるシステムで、他人との比較ではなく、その子の過去との比較となる。他人との比較ではないから、生徒間の嫉妬も生まれにくい。

photo:han3617/istockそして生徒たちは「あの子はラグビーが上手」「この子は読書家」と、得意なことや頑張っていることを互いにたたえ合う。日本育ちの私は褒める育児に懐疑的だったが、子どもとは「すごい」「がんばっている」と承認されることで「もっとすごくなりたい」「もっとがんばりたい」と、自然に思う生き物だとイギリスで初めて知った。幼い頃から積み上げる皆から認められる喜び、自己肯定感の高まりが、年齢が上がるごとに揺るぎない自信へとつながり、他のことにも良い影響を与えていく。

イギリスは世界で最も受験が厳しいといわれている。「韓国や日本に比べれば、たいしたことないはず」と思っていたが、その考えは早々に覆された。「難しい」の質が違うのだ。一部の例外を除いてイギリスのボーディングスクール入学予定者には、9月入学の3カ月前に最終試験が課される。どのような問題が出るのか。「歴史」の試験からご紹介したい。記述式の大問2問のみ。1題目は「Evidence Question」で、問題用紙にある文章や絵画の資料に自分の知識を加えて答えるというものだ。2題目の「Essay Question」は英国史全体からの出題。例えば「英国史の中でひとつの戦争を選び、その後の歴史にどのような影響を与えたか説明せよ」という問題を解くのである。しかも鉛筆禁止。ペンで一気に書き仕上げる必要がある。ここで問われるのは論点を見つけ自らの道筋に従って論じる力、総じていえば「考える力」。この「考える力」の大切さをプレップスクールに通っている子どもたちは「神学と哲学」の授業でたたき込まれる。

photo:scotto72/iStock「プラトンがアカデミアを作った理由は、若い人たちが単なる知識の塊になるのではなく、優れた思想家であってほしかったから」普通に授業を受けている12歳であれば、誰もがこの教えをそらんじることができるという。13歳を前に自分たちは考えなければならないこと、逆にパターン化された解答や、知識の抜き出しは求められていないことを知る。ここが大きく日本と異なる点だ。論文形式のテストは、その考える力をあますところなく発揮する絶好の機会となる。具体的には自分で設定した論点に向かってエッセイの骨子を組み立て、歴史、ラテン語、英文学、ギリシア哲学、神学で得た知識、読んだ本から学んだ要素を加えつつ、採点者が納得する文章を書き上げる。プレップスクールの授業では、この高度な作文技術の訓練を重ねる。そして最終試験の8科目において、各校が要求する基準点に達した人物のみが正規合格を得て、晴れて「Border」となれるのだ。

photo:monkeybusinessimages/iStock各国のボーディングスクールに共通する輝かしい進学率や充実の学校施設、高額な学費、ネットワーキング力などが話題になりがちだが、その入学のタイミングや求められる英語力は、国によって異なる。

ここではイギリス、スイス、アメリカの3国に絞ってその最新事情と違いを見ていきたい。王道の英国ボーディングスクールイートン校やハーロウ校に代表される伝統的な名門ボーディングスクールは、13歳入学が主流だ。イギリス国内のプレップスクールから進学するのが一般的だが、スイスの低年齢ボーディングスクールや、海外のインター校からの入学もできる。特に最近は、シンガポール、ドバイ、モスクワなどで試験や説明会を行い、留学生のリクルーティングに積極的な名門校も出てきた。学費が高額になりすぎてイギリス国内のみで生徒を集めるのが困難なこと。オックスブリッジなど、トップ大学への進学率を上げるには「賢い留学生」の獲得が効果的であること。この2点が国際化の理由といわれている。

実際にいくつかの名門校を訪れて感じたのは、進学先も国際化を意識している学校が多い点だ。男子ボーディングスクールの老舗トンブリッジ校では、アメリカから進学コンサルタントを雇用し、アメリカの大学への実績作りにも力を入れ始めた。イギリス屈指のIBスクール(国際バカロレア認定校)であるセブノークス校では、2020年にハーバード大出身のアメリカ人を校長に迎え、より一層のグローバル対応を目指そうとしている。伝統と歴史を重んじる名門ボーディングスクールは入り口も出口も、門戸を海外に向けて広げ始めている。一方で日本ではあまり知られていないが、13歳から名門ボーディングスクールに入学する子どもたちの多くはプレップボーディングスクール(寮制の私立小学校)から進学する。こちらは7、8歳からの入学となる。小学校からボーディングスクールと聞くと「預けっぱなし=子育て放棄」と思う方もいるかもしれないが、実際はフル(平日週末ともに寮生活)、ウィークリー(平日のみ寮生活)、フレキシ(好きなときに寮生活)と3種類あり、最近は子どもが自宅に帰れる頻度を選べるのが主流。またスポーツの対抗試合があれば、親は応援に駆けつけることもできる。寮生活を基本としながら、親と子どもが触れ合う機会が設けられている。

権威ある「Tatler Schools Awards」 で「Prep School of The Year 2019」を受賞したパップウィック校のトム・バンバリー校長は8歳からの伝統的なフルボーディングについて、こう指摘する。「時代とともに変わる親子関係に伴い、寮スタイルも変化する必要があります。我が校では8歳からの入寮は早すぎると考え、全員に寮生活を義務付けるのは6年生の夏から。この年齢であれば寮生活への移行がスムーズです。地元から通っている生徒は週末に自宅に帰ることが許されるので、精神的な負担も少なく済みます。じっくりと2年間かけて、少しずつ親から離れて生活する訓練をしながら、13歳からのボーディングスクールで必要なライフスキルを教えるのです」

ただし日本からプレップボーディングスクールへ進学するならば「学生ビザ」を付与してくれるフルボーディングスクールが一般的。親代わりとなる保護者(ガーディアン)を雇う法的義務がある。親と頻繁に会えるイギリス人家庭の子どもと、親と年に数回しか会えない日本の子どもが同じ寮で暮らす場合、日本の子どもたちは親に会えない寂しさとどう向き合うのか。相当な覚悟が必要だが、「得がたい何か」を求める親子にとっては究極の選択かもしれない。特に過去何十年にもわたり特定の名門校に大量の進学者を送るプレップスクールを「XX校のFeeder School」と呼び、そういった小学校に通っていれば、名門校に進学できる可能性は格段に上がるからだ。

英語が未熟でもOKなスイスプレップボーディングスクール入学時には年齢相当の英語力を求められるが、スイスの低年齢ボーディングスクールには英語が未熟な子どもを受け入れる寛容性がある。FESスイス留学センターでディレクターを務め、長年にわたりスイスの学校を見てきた河野瑠衣氏はこう語る。「英語が全くできなくても入学できるのが日本人にとって最大のメリットです。世界中の子どもを受け入れてきた長年の経験と実績から、どの学校にも英語が第2言語である子どものための特別カリキュラムが用意され、少人数で学業の指導に当たります。子どもたち一人一人の心に寄り添ったケアができるのもスイスならでは。大勢のスタッフが日々のお世話を担当し、生徒たち一人一人に深い愛情を注ぎます。子どもが親に会えるのは年に3、4回の長い休暇時だけですが、子どもたちが寂しくないように土日にも学校がさまざまなアクティビティを用意します。日本からきている留学生だけが週末寮に取り残されるということはありません。

photo:extravagantni/iStock学費が他の国に比べて高額なのは、こういった心のケア(パストラルケア)が充実しているからです」一方で、中高生から留学できるスイスの学校は、近年世界的に需要が伸びており、高い英語力が求められることもある。だからこそ英語が不安な日本人には7、8歳以下での入学が選択肢になる。「小学校低学年の数年間に最高水準の学習サポートを受けることにより、2〜3年間で全体の学力が大きく飛躍する留学生もいます。成績が良ければスイスから英米のボーディングスクールに進学または編入する道もあるのです」英語力ゼロからスタートしながらも、数年で学力に磨きをかけ、世界中の学校へ門戸が広がるのもスイス留学の魅力のひとつだ。

勉強が大変なアメリカのスクールアメリカのボーディングスクールも2種類。ハイスクールとジュニアがある。ハイスクールは9年生(14歳)または10年生(15歳)での入学が一般的。入学にはSSAT(Secondary School Admission Test)という共通テストの受験が必要で、10スクールというトップ校ともなると、学校の成績とインタビューに加え、SSATで95%の得点率が求められることもある。「Boarding School Access」で留学コンサルタントを務め、「2019 エリートボーディングスクールフェア 」を企画するフランコリーニ律江氏に聞いた。「近年、アジア諸国などの留学生が増えており、入学時に求められる英語のレベルは上昇気味。日本人家庭や日本の学校で育ったお子さんが名門ハイスクールに入学するのは容易ではありません。しかし、ジュニアボーディングスクールに3〜4年通い、そこで試験準備をすれば、ハイスクールで希望の学校へ入学できる可能性は高くなります」

photo:extravagantni/iStockスイスやイギリスでは7、8歳が入学のタイミングだが、アメリカのジュニアボーディングスクールは12歳からの入学。ここに大きな意味があるとフランコリーニ氏は言う。「小学生低学年での留学は親の意思によるものですが、小学6年生ともなると、子どもの“アメリカで勉強したい”という意思が留学のきっかけとなります。この気持ちがあれば多少つらいことがあっても乗り越えられるのです。日本人の勤勉さを評価する学校もあり、頑張りたいという意思を行動で示せば徹底的にサポートする環境が整っています」アメリカは留学生ビザも取得しやすく、イギリスのようにガーディアンを雇う必要がない。ただし、勉強量は並大抵のものではないという。授業は数学であってもディベート形式で、自分の意見を述べることができないと授業についていけない。課題も山ほど出るので、高校生でも寝る間も惜しんで勉強する。楽しいばかりの留学生活を想像していたら、そのギャップに苦しむかもしれない。大学への前準備としてのタフさが心身ともに求められる、それがアメリカのボーディングスクールの特徴といえるだろう。

今、何から始めるのか?スイスの低年齢ボーディング以外は、入学時に年齢相当の英語力が求められる。ここで間違えてならないのは、求められているのは英会話力でないこと。留学生というハンディを考慮されたとしても、英語の文化背景まで理解した上での、読む、書く、討論する、このすべてにおいて、ネイティブレベルの英語力が必要とされている。イギリスの教育コンサルタント会社「Keystone Tutors」香港支社のジェニー・マクゴーワン氏は、日本でセミナーを開催した後、こう語っている。「日本の子どもたちには英語の壁が立ちはだかっています。7、8歳からイギリスのカリキュラムに入るのがベストですが、それが難しい場合には13歳から名門校を検討するのではなく、まずは留学生を受け入れるボーディングスクール、例えば昨年開校した『The King’s School Canterbury International College』のようなところに入り、イギリスのカリキュラムの中で集中的に英語を学ぶのがよいでしょう。英語ができるようになれば、より高いレベルの学校に編入する。入学時に求められる成績が低い学校=学力レベルが低い学校であるとは限りません。入学しやすい学校のほうが子どもにとっては幸せという場合もあるのです」このようにボーディングスクールという選択肢は多くのメリットがあるものの、すべての子どもにふさわしい理想の教育ではないことも最後に加えておく。

photo:recep-bg/iStock親元を離れて暮らすことによる精神面での大きな負担はしばしば「ボーディングスクール症候群」としてイギリスでも取り上げられる。そのデメリットも把握しながら、子どもの心の成長や親との人間関係など、家庭ごとに異なる状況を総合的に判断しなければならない。しかし、いつかはボーディングスクールにとの思いが少しでもあるならば、早め早めに情報収集するのがよい。インターネットで学校を見て旅行ついでに学校訪問をする、または前もって留学カウンセラーに会っておくのもよいかもしれない。特にアメリカは入学1年半〜2年前の準備が必要だし、イギリスの名門校狙いだと願書締め切りは入学の約3年前となる。この入学までの道筋を把握できないと、受験機会を逃してしまうのだ。ボーディングスクール人気は、中国、ロシア、アラブ諸国だけでなく、東南アジアや中央アジアを含むアジア全体でも高まっている。この世界的な需要の上昇を鑑みれば、子どもが幼稚園のときからリサーチを始めたとしても、早すぎることはない。

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